睡眠不足のリスクや症状と、睡眠負債の返済方法(解消方法)について

前回まで、睡眠に関連する都道府県別ランキング世界ランキングをご紹介してきました。
スマホやパソコンなどでのネットの普及、労働状況、都市部の深夜の利便性などが睡眠不足の理由になるのではないか?というような、原因に関する話でした。

今回は睡眠不足によるリスクや、睡眠負債の返済方法(改善方法)などの話をしていきたいと思います。

●睡眠時間/都道府県別ランキングから睡眠不足の原因を考えてみる

睡眠時間、就寝時間、通勤時間の全国都道府県別ランキングを元に、地域による睡眠時間(睡眠不足)の傾向を考えてみました。なんとなく都心部の方が睡眠時間が短いような気がしていたのですが、やはりその通りの結果になっています。

●睡眠時間/日本人の睡眠時間は、世界の最低ランク!?

睡眠時間の世界ランキングを見ながら、日本人はなぜ睡眠時間が少ないのかを考えていきます。特に日本人女性の睡眠時間は世界の最下位。既婚女性の場合は、パートナーの理解も必要かもしれません。

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睡眠負債」とは

睡眠負債(すいみんふさい、英: Sleep debt)は、スタンフォード大学の研究者により提唱された言葉で、日々の睡眠不足が借金のように積み重なり、心身に悪影響を及ぼすおそれのある状態である。

引用:ウィキペディア「睡眠負債」

「睡眠不足」と「睡眠負債」は、ちょっと違います。
睡眠不足はたった1回の寝不足も指しますが、睡眠負債は睡眠不足が積み重なったものです。

睡眠負債は、週末の寝だめでは解消できません。

人はそれぞれ体内時計を持っていて、普段より極端に長い睡眠時間の場合は後半の眠りが浅く、いわゆる「質の悪い睡眠」になってしまうので、あまり意味がありません。
ですから、寝だめだと睡眠負債はそれほど返済できないのです。
それどころかむしろ生活リズムを余計に乱し、翌週の睡眠不足を招く可能性があるため、良い方法ではありません。

睡眠不足・睡眠負債のリスク

睡眠不足・睡眠負債は、単純に「昼間眠くて困る」というだけではありません。
思ってた以上に心身を蝕みます。

・鬱病、ストレスが解消されない

人は寝不足になると、疲れて不機嫌になったりイライラすることがあります。

普段は穏やかな性格の人ほど、寝不足によるイライラが原因で誰かについキツいことを言ってしまったり八つ当たりしてしまうと、あとで後悔することになるでしょう。
その後悔が、新たなストレスになります。
そのことがきっかけで対人関係に問題が出てしまえば、それもストレスになります。

このようなことが長く続くと自分自身を追い込み、鬱病の要因になりかねません。

・認知機能の障害

寝不足だと集中力がなくなり、「覚える」「思い出す」などが困難になります。
たまにそうなるくらいならいいのですが、それが日常になってしまうと周りからの評価も下がり、仕事や交友関係においての障害になります。
場合によっては、人生そのものに大きな影響が出てしまう可能性もあるのです。

・高血圧

人間の身体は起床時から日中にかけて血圧が上がり、夜にかけて下がっていくのが一般的です。
ところが睡眠不足だと、寝ている間も血圧が高いままということがあります。
睡眠負債によりずっと血圧が高いままだと、心筋梗塞や脳卒中の危険性が高まります。

・体重の増加

睡眠不足が続くと新陳代謝が上手く機能しなくなるので、基礎代謝が落ちます。
体重をなんとかしたいと気にしている方ならご存知の通り、基礎代謝が低いと、太りやすく痩せにくい身体になってしまいます。

・免疫力の低下

睡眠中は抗体が産生されますが、睡眠不足だとじゅうぶんに産出されません。
抗体不足だと外部から侵入した細菌やウィルスと戦う力が弱まり、病気にかかる危険性が高まったり、病気の治りが遅くなることもあります。

糖尿病、心臓病、腎臓病などの発症

睡眠中は抗体の産出、ホルモンバランスの調整、身体の修復など様々な機能が活発に働いて、私たちの身体を守ってくれます。
でも睡眠不足だとそれらの仕事が疎かになり、慢性疾患へと繋がってしまいます。
また、睡眠不足はインスリンの働きも低下させるため、糖尿病のリスクが高まります。

運転や機械操作時の事故

寝不足は集中力の低下や反射神経の鈍さを引き起こしますので、そのことが事故に繋がりやすくなります。

・その他

・仕事効率の低下
「睡眠不足による経済損失額は約15兆円」、「日本人の生産効率はアメリカの2/3程度」などと言われています。
勤勉で真面目な性質の日本人は一生懸命働くのに、2/3というのは悲しいですね・・・

・生活の質の低下
睡眠不足が続くと何事に関してもやる気が起こらず、ダラダラと過ごしてしまいがちになります。
当然、活力の無い生活より活力のある生活の方が、毎日が充実していますよね。

統計的には、1日7~8時間の睡眠を確保できている人はできてない人に比べ、
・寿命が長い
・生活習慣病の罹患率が低い
・体型の変化があまりない
などといわれています。

注意力や集中力は、睡眠時間と大きな関連性がある

米ペンシルべニア大学医学部などの研究チームが行った、睡眠不足と注意力や集中力低下の関連性に関する研究結果です。

被験者を以下の4つのグループに分け、注意力や集中力の変化を2週間調査します。
・「2日間徹夜」(←一番最悪な状況としてのモデル)
・「1日4時間睡眠」
・「1日6時間睡眠」
・「1日8時間睡眠」

下のグラフで、縦軸の数字が大きいほど注意力と集中力が低いということです。
2日間徹夜のグループは当然のことながら、かなり注意力と集中力が低下しますので、それを基準に見ていきます。
徹夜組は2日後、約15という数字を付けています。
かなり眠く、ボーッとしていることでしょう。

参考:Van Dongen HP et al. Sleep(2003)より改変

2週間後、6時間睡眠グループ(黄色)でも注意力と集中力が低くなっている様子がうかがえますが、4時間睡眠グループ(赤)にいたっては、2日間徹夜グループと同レベルまで数値が悪くなります。
たった2週間でこの結果です。

毎日4時間しか眠らない人はそう多くないでしょうが、1日6時間睡眠の人は、特に働き盛りの年代にたくさんいます。

これは2週間続けた結果ということで、実際は休日があれば途中で長く眠ることも可能です。
ただ、毎日6時間しか眠らない人は、休日だからといって長く熟睡できるとも限りません。
人の身体は「慣れ」というものもありますし、ある程度パターンが作られてしまいますから。

1日6時間睡眠と8時間睡眠では、かなり睡眠負債の溜まり方も違ってきそうですね。

睡眠負債、返済方法の提案

・15時までに10~20分の昼寝をする(15時以降だと夜に眠れなくなるかも)
・午前中に日光を浴びる(14~16時間後に睡眠ホルモンのメラトニン分泌され、眠りにつきやすくなる)
・寝る前はPCやスマホを使わない(メラトニンが抑制されてしまう)
・朝のたんぱく質摂取
・会社でも自宅でも、椅子に長時間連続で座らない
・安眠効果の期待できる寝具を使う
・寝室や寝具の色は、青・緑・ベージュ・淡いピンクなどに統一するのが好ましい
・夜はカフェインを摂らない
・就寝の2時間ほど前に軽い運動をする(激しい運動はNG)
・入浴後3時間くらいが、入眠に最適
・毎日30分ずつ、今より早寝をする
・カモミールやラベンダーなどのアロマを使用する
・寝る前は蛍光灯の光を避ける(光全般を避けた方が良い)
・薬の服用などについて、医者に相談する

短いお昼寝は効果的だそうです。
仮眠室のある会社が増えてるという現実が、それを証明していますね。

寝室の色についてですが、鎮静色である青と緑がベストです。
逆に避けた方がいいのは、ハッキリして濃い暖色の、オレンジや赤など。
暖色以外に避けた方がいいのはグレーや紫色で、特に紫色の寝具や寝室は、青色の寝具や寝室と比べて、2時間も睡眠時間が短くなると言われています。



まとめ

今まで日本人は「睡眠」や「休息」が大切だということを分かっていなかったわけではありませんが、優先順位が低く後回しにしてきました。
社会全体でも高度成長期~バブルにかけては特に、休む間もなく働き続けることが優秀な人間であるかのような空気があったのではないかと思われ、それがその後も継承されているところがあります。
また、そういう空気に慣れてしまい、私生活でも「しなくてはいけないこと」や「やりたいこと」があると、それをこなすために真っ先に削られるのが睡眠時間だったのでしょう。

私も「寝不足はだめ」ということが分かっていながら、睡眠負債にここまでの悪影響があるとは深く考えず、甘く見ていました。

いきなり生活スタイルを変えるというのは難しいことですけれど、「睡眠負債・返済方法の提案」の中にはなにか一つくらい、すぐに実行できることもあるかもしれません。
ご自分のこともそうですが、私と同じく主婦の方、大切なご家族のためにも色々と工夫していただきたいと思います。

ちなみにアロマについてですが、私は「よもぎの香り」が合っているようで、よもぎシートの匂いを嗅いでいるととても落ち着き、眠くなります。
もしそういうグッズを見かけたら、嗅いでみてください(笑)


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